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日米の年金と国籍

海外年金相談センター 市川俊治

海外年金相談センター 市川俊治

カテゴリー:年金・保険

将来の日本の年金受給への備え

年金は働いている現役の方々にとってまだ先のことと捉えられがちです。でも退職後の安定した生活を保障するのは何と言っても「年金」です。老後のマネープランを考えるとき、年金額を把握しておくことは欠かせません。将来の日本の年金の受給手続きのために事前に準備しておくことを説明します。

 

(1)基礎年金番号の確認

すべての公的年金制度で共通して使用する一人に一つの番号を「基礎年金番号(基番)」といいます。ご自身の年金情報はすべて基番で管理されています。年金の受給以前にインターネットを通じて自分の年金情報を確認できるサービスである「ねんきんネット」(後述)に加入する為には基番が必要です。その為にもご自身の基番を確認しておきましょう。

基番制度は1997年1月にスタートしました。それ以降に発行された年金手帳(青色)には基礎年金番号が記載されています。2022年4月以降は年金手帳の発行は中止となり、その代わりに「基礎年金番号通知書」が発行されることとなりました。年金手帳をお持ちであれば通知書を取得する必要はありません。

基番の確認は、帰国の際、近くの年金事務所に身分証明(パスポート)を持参し申し出るか、日本在住者に委任状を送り、年金記録の確認要請を行えば基礎年金番号を付けて回答されます。

 

(2)年金加入記録の確認

基番を導入する以前は一人で複数の年金番号を持っている加入者が多くいたため、基番導入の際、複数の記録を一本に統合しました。その際、だれのものか不明な宙に浮いた記録が当初5千万件以上発生しました。ここで注意すべきは、年金加入記録は「申請主義」です。申請者が年金に加入していた記録を申し出て初めて認められます。

その為に複数の会社に勤務されていた方や結婚して苗字が変わった方などは事前にご自身の年金加入記録が正しく記録されているかどうか確認をしておくことが重要となります。

勤務先名、所在地、勤務期間(国民年金なら加入していたときの住所、加入期間)を年金事務所に申し出て記録の確認をしておきましょう。その結果、年金事務所の窓口の端末に記録が無い場合、日本年金機構への「年金記録照会」(機管の古い台帳調査)を要請して下さい。79年から89年にかけて紙の記録を電子データにする際、名前等の入力ミスがあったからです。

 

(3)日本の連絡先を届けておく

年金受給者を除いて年金事務所に米国の住所を届けておくことはできません。日本年金機構から「ねんきん定期便」や重要な通知が届くようにするためには実家、親戚等の住所を連絡先として年金事務所に届けておくことが必要です。一時帰国された時訪問するか、日本の身内の方に委任状を渡しその変更手続きをすることも出来ます。

「ねんきん定期便」は加入記録を基に現時点での見込み額を知ることが出

来ます。原則、毎年の誕生月に自宅に郵送されます。

 

(4)「ねんきんネット」の活用

インターネットでは日本年金機構(http://www.nenkin.go.jp/)の「ねんきんネット」で「ねんきん定期便」の内容を詳しく見られます。具体的には(イ)年金記録の確認(ロ)将来の年金見込み額の確認(ハ)年金定期便の閲覧(ニ)日本年金機構から郵送された各種通知書の確認が可能です。利用の為には、基礎年金番号等が必要です。

◆米国の場合

Social Security Administration(社会保障庁)のサイト(www.ssa.org )の中の「My Social Security」で自分の口座を開設すると、以前レターで送られてきた積立の記録や受給金額の予測などがオンラインで確認出来ます。

 

(5)日本の銀行口座の開設・保持

日本の年金受給者の方が、年金の振込先に米国の銀行口座を指定した場合、振込まれる都度、銀行でハンドリングチャージ(Handling Charge取扱手数料)として20ドル前後を天引きされます。日本の年金は偶数月に年6回振り込まれますので、年間20ドル×6回=120ドルの出費となります。更に65歳以降は老齢厚生年金と老齢基礎年金の2本立てとなり別個に振り込まれますので120ドルの負担は倍の240ドルとなります。ご夫妻で受給しているご家庭は480ドルの負担となってしまいます。また、日本の銀行とアメリカの銀行で直接送金できない場合(コルレス関係がない場合)、中継銀行を通すことになるのでさらに中継銀行手数料がかかることになります。

そこで日本の年金を日本の銀行口座に振り込むことによりハンドリングチャージを避け、年金額の目減を回避することが可能です。また日本に一時帰国するときの滞在費などに充てたい、円安対策等の事情から日本の年金を日本の銀行口座で受け取りたいと希望される方もいらっしゃいます。一方、米国内の銀行でハンドリングチャージを取らない銀行口座もありますので予め調査されておくことも必要です。

 

さて、日本の年金受給者にとり吉報として

①米国年金WEPの老齢基礎年金(国民年金)への誤適用の是正が決定されたこと(2022年8月発表)

②そのWEP制度自体が2024年1月以降廃止となったことは既にお知らせしましたが、この2つの情報について在米日本大使館のHPで分かり易く説明されていますので是非ご一読ください。

https://www.us.emb-japan.go.jp/itpr_ja/wep_haishi.html

 

なお現在SSAはこれまでの誤適用(①)に対する年金額の還付作業が継続中です。今回の改定(②)とは別の還付作業です。②の減額分の支払い3月末(2025.03.31)までに1回払いで行われる予定です。①の還付を受けていない方は引き続き還付請求を続けてください。先日も誤適用に対して3年前にクレームレターを提出されていた方から誤適用がやっと是正され年金月額が4万円増加し過去に遡って是正金額が一時金で振り込まれたとの吉報を頂いています。

 

海外年金相談センター
市川俊治
http://nenkinichikawa.org
E-Mail:shunjiichikawa@gmail.com